
山口2区補選 (4月28日付・読売社説)
医療や年金に対するお年寄りの不安を、政府・与党が甘く見ていたツケがきたのだろう。
福田政権発足後、初の国政選挙となった衆院山口2区補欠選挙は、民主党前議員の平岡秀夫氏が自民党新人の山本繁太郎氏を破って当選した。
民主党は、次期衆院選の前哨戦と位置づけ、ガソリンの暫定税率の復活阻止や、75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の廃止などを訴えた。
与党は、国政課題の争点化を避けるため、地域活性化を前面に押し出し、組織戦を展開した。だが、結果的には、自民党支持層すら固めきれなかった。
敗因の一つに、後期高齢者医療制度をめぐる政府・与党の対応のまずさが挙げられる。不安を抱える高齢者に対し、十分な準備や説明を怠り、混乱を招いた。
山口2区は、全国でも有権者に占める高齢者の割合が高い。読売新聞の出口調査で、有権者が最も重視すると答えた政策は「年金・医療」だった。自民党支持者の中でも、年金・医療がトップで、景気、道路財源、格差問題などを大きく上回った。
ちょうど補選告示日の15日から始まった年金からの保険料天引きは、年金記録漏れ問題に続いて、お年寄りの不評を買った。逆風にあわてた与党は、選挙戦終盤になってようやく制度の利点などを訴えたが、泥縄式の対応では理解は得られまい。
福田首相は就任以来、「国民の目線」で「生活重視」の政治、行政をする、と繰り返している。
しかし、医療など国民に身近な分野で“お役所仕事”を見過ごしていては、首相の言葉はむなしく響く。導入の直前に「長寿医療制度」と言い換えさせても、焼け石に水というところだ。
道路特定財源の一般財源化もそうだが、首相の決断はタイミングが遅い。その結果、回避できるはずの政治的混乱を招いている。
首相として何を実現したいのか。政治意思を明確に示し、指導力を“発信”しなければ、内閣支持率も好転しないだろう。
ガソリン価格が下がった後で行われた今回の選挙結果は、国会攻防に影響するという見方もある。だが、与党は、動揺せず、暫定税率を復活させるため、税制関連法案を粛々と衆院で再可決しなければならない。

民主党も、一般財源化の実現に向け、与党と協議を続けるべきではないか。審議拒否をしても政権担当能力を疑われるだけだ。
(2008年4月28日02時14分 読売新聞)