ミャンマーの被害に対し心よりお見舞い申し上げます
余録:サイクロン「ナルギス」
「水多きところに雨降る」とはミャンマーのことわざという。同じ国でもイラワジ川下流のもともと水の豊かな地域にはたくさん雨が降るし、上流の乾燥地は雨に恵まれない。世の中は公平でないというたとえだ▲衛星写真を見ると、その多雨地帯のイラワジ川河口付近が広範にわたり水没して見える。ミャンマー中・南部を2日から3日にかけて直撃したサイクロン「ナルギス」による被害は、死者・行方不明者6万人以上と国営テレビが報じた▲熱帯性低気圧のなかでもインド洋のサイクロンはしばしばベンガル湾沿岸に大被害をもたらす。91年にはバングラデシュで約14万の死者を出し、その前の70年には同じ地域で死者数十万人という熱帯性低気圧による史上最悪の被害が生じた▲だが今まで万を超える死者の出た被害記録はなかったというミャンマーだ。なのに今度は600万人の住むイラワジ川のデルタ地帯が3メートルの高波に襲われ、多くの村々が壊滅した。交通や通信も寸断され、被害の全容はまだつかめていない▲急がれるのは家を失い、食料や飲料水もなく孤立した被災者の救援である。各国の支援に軍事政権は物資受け入れを表明したが、救援要員へのビザ発給は進んでいない。多くの人命が今ここでの緊急対応にかかっているのは分かっているはずだ▲その軍事政権は権力の永続化をはかる新憲法の国民投票を大半の地域で予定通り10日に行うという。国民の生命など二の次といわんばかりの軍政下でミャンマー史上最悪の災害に襲われた被災民である。「水多きところに雨降る」と運命の不公平を嘆く人々に、国際社会は一刻も早い救援の手をさしのべたい。
毎日新聞 2008年5月8日 0時08分
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