「虫たちの最期 気をもむ晩夏」という投書があった「:天声人語
本紙の声欄を読んで、ときおり切り抜いている。先ごろの東京本社版に「虫たちの最期 気をもむ晩夏」という投書があった。横浜の高校生石井杏奈さんは、アスファルトの上で動かない昆虫などを見つけると、拾って土の上に移すのだという▼「せめて彼らが最期に横たわる場所が自然物の上であってほしい」と書いていた。命を終えるものを土に戻してやる。そうすれば死骸(しがい)は他の命を育む。やさしい人柄とともに、「命の循環」が分かる人なのだろうと推察した▼秋が深まれば、今度は枯れ葉がアスファルトに散る。集められ、焼却されるものも多い。野山なら散り敷いて生物のすみかになり、分解されて土に溶けていくのに、都会の落ち葉はそれもかなわない▼『葉っぱのフレディ』という絵本を覚えておられるだろうか。生と死や転生が、木の葉の一生を通して語られる。枯れて散っても、土に還(かえ)って木を育てる力になる。大人の共感を呼び、これまでに110万冊も売れた▼刊行から10年になるのを機に、版元の童話屋(東京)がささやかな試みを始めるそうだ。22日からの絵本の売り上げから、1冊につき200円を、南米アマゾンの森の再生に寄付する。1冊あたり5本の苗木が、危機に瀕(ひん)した森に植えられるという▼命は姿を変えて生き続ける。それを大自然の設計図が寸分の狂いもなく司(つかさど)っている――と絵本は説く。ひょっとして石井さんも読んだのかな、と想像してみた。虫も葉っぱも侮るなかれ、である。それぞれの命をつないで地球の生態系を担っている。
「バカヤロウ」までは言うなと茂祖父
勝負ごとの予想屋なら、商売にならないと投げ出したのではないか。消化試合と目された通りの戦いに勝って、福田康夫氏が「天下餅」を食うことになった。新しい自民党総裁は明日、戦後29人目の首相に選出される〉。1年前の明日、24日付の小欄の書き出しである▼「手抜き」とお叱(しか)りを受けそうだが、名を麻生太郎氏に、数を30人目に置き換えれば、そのまま使い回しができる。安倍晋三氏から数えれば3年続けてとなり、秋の彼岸の恒例行事さながらだ▼だが、今年は違うことがある。同じ天下餅でも、とりあえず「三日天下」でしかない。遠からず総選挙の火ぶたが切って落とされる。麻生氏は敵将小沢一郎氏を呼び捨てに攻撃して、敵愾心(てきがいしん)を大いに燃やす▼べらんめえが売りだけに、弁舌は小気味良い。時折の勇み足は人間味の裏返しか、ただの軽率か。せんだっての朝日川柳、〈「バカヤロウ」までは言うなと茂祖父〉は笑わせた。危なっかしさが、この人の色気なのかもしれない▼奇(く)しくも昨日は、その祖父、吉田茂元首相の生誕130年だったそうだ。選出後の壇上で麻生氏自らが披露した。「民主党に勝って初めて天命を果たせる」と語る声は、党とともに祖父への誓いにも聞こえた▼かくて両党の「選挙の顔」は出そろい、政治の季節の幕は開いた。「いい顔が推薦状なら、いい心は信用状」と格言に言う。党の心ともいえる「マニフェスト(政権公約)」にそれぞれ何を盛るのか。「いい顔」も大事だが「いい心」を欠いては、有権者の心はつかめない。
団塊の世代も先陣は既に還暦を迎えた
団塊の世代も先陣は既に還暦を迎えた。人生80年時代にあって60歳はまだまだ若く、定年を延長する企業も多くなってきたが、年金や医療、介護と問題は山積。老後も綱渡りか、家計ひっ迫かと不安が募っては現役として働き続けなければならない
▼県内も65歳以上84万人、100歳以上が初めて1000人を超えた。41市町すべてで高齢化率が増して22%近く、高齢者のみの世帯も16%を超える
▼高齢化はさまざまな問題をはらんでいるにしても、とまれ長寿はめでたい。あちらこちらウオーキングを楽しむ元気な姿も高齢者がほとんど。高額だが発売と同時に売り切れる世界一周クルーズも高齢者の人気を得てフル操業だ
▼10歳辻髪に始まる賀寿の異称も数あり、それぞれに故事にならって15志学、20弱冠、30而立、40不惑、50中老、60耳順。61歳の還暦以降は古希70、喜寿77、傘寿80、米寿88、星寿・卒寿90、珍寿95、白寿99、紀寿100
▼120歳は昔寿・大還暦、その上は一足飛びに250歳天寿とある。お祝いの色も赤の還暦、紺か紫の古希、黄を加えた喜寿、金や茶も加えて傘寿・米寿、卒寿には白か黄、白寿と紀寿は白。その上が見あたらないのは100歳を迎えることもまれだったからだろう
▼人生50年時代の江戸後期、米寿を全うした儒学者佐藤一斎に「視観察」の例えがある。30歳以下は視=あるがままに見る、30―50は観=本質を見る、50―70は察=全体を把握する時候ととらえ、自身60歳過ぎてようやく人間の機微が分かるようになってきたという。あすは敬老の日。先人の歩みに感謝して、先人の知恵に学ぶ日でもある。
テーマ : **暮らしを楽しむ** - ジャンル : ライフ
あれだけひんしゅくを買った首相を“再評価”する声も
▼▽あれだけひんしゅくを買った首相を“再評価”する声も小さいが出てきた。日中関係を改善した、低炭素社会や消費者行政に道をつけた等々。しかし深手を負った自民党には降ってわいた“準決勝第2試合”が最大の置き土産だろう。
▼▽「国民に大きな迷惑を掛けない」とした退陣表明の時期は、第1試合に当たる民主党代表選に総裁選をぶつける思惑だったとか。これ幸いと派閥の締め付けを緩めて候補者を乱立させ、百家争鳴、劇場化に持ち込んだ自民に老練ぶりを見る。週末は多分TV各局の画面を占拠するのだろう。
▼▽おかげで小沢民主党はすっかり影が薄い。不戦勝にしてしまった準決勝第1試合をさぞ悔いているだろう。センバツ(参院選)で勝ってねじれ国会を生み出したものの、“衆参連覇”してこそ政党の本懐。大胆な政策を発表し総裁選ごっことやゆするが、球場内の歓声にかき消されがちだ。
▼▽決戦を避けて首をすげ替えることで政権を保ってきた自民も、天王山に臨む気配だ。激戦の余勢を駆って覇権を死守したい思惑に、野党も政権構想と連合チーム作りを急ぐ。決勝は客席と茶の間の審判で決まる。人格、識見、力量、スタンドプレーを看破する眼力を準決勝で養っておくか。
▼▽「国民に大きな迷惑を掛けない」とした退陣表明の時期は、第1試合に当たる民主党代表選に総裁選をぶつける思惑だったとか。これ幸いと派閥の締め付けを緩めて候補者を乱立させ、百家争鳴、劇場化に持ち込んだ自民に老練ぶりを見る。週末は多分TV各局の画面を占拠するのだろう。
▼▽おかげで小沢民主党はすっかり影が薄い。不戦勝にしてしまった準決勝第1試合をさぞ悔いているだろう。センバツ(参院選)で勝ってねじれ国会を生み出したものの、“衆参連覇”してこそ政党の本懐。大胆な政策を発表し総裁選ごっことやゆするが、球場内の歓声にかき消されがちだ。
▼▽決戦を避けて首をすげ替えることで政権を保ってきた自民も、天王山に臨む気配だ。激戦の余勢を駆って覇権を死守したい思惑に、野党も政権構想と連合チーム作りを急ぐ。決勝は客席と茶の間の審判で決まる。人格、識見、力量、スタンドプレーを看破する眼力を準決勝で養っておくか。
72歳のマケイン氏は逆境に勝てるか(9/6)

社説1 72歳のマケイン氏は逆境に勝てるか(9/6)
米共和党大会で大統領候補に指名されたジョン・マケイン上院議員は受諾演説で「変革」を強調した。政権党の候補者らしくない言葉をあえて使って、共和党が直面する「逆境」を克服しようとする戦術が奏功するかどうか。民主党の大統領候補、バラク・オバマ上院議員との3回のテレビ討論が重い意味を持つ。
ワシントン・ポスト紙とABCが6月に実施した世論調査によると、米国が悪い方向に向かっているとの回答が84%に達した。出口の見えないイラク戦争や景気の悪化が背景にあると推定される。経験則によれば、現状に対する国民の不満がこれほど高いなかでの大統領選挙では野党候補が勝つのが普通とされる。
ブッシュ大統領による共和党政権が2期8年続くのに加え、72歳という年齢も一般的には不利に働く。これらの客観条件はマケイン陣営にとっては織り込み済みのはずであり、最近の各種世論調査も平均すれば4ポイント台の小差でオバマ氏に迫る結果になっている。11月の結果は現時点では予測しにくい。
「ブラッドリー効果」ないし「ワイルダー効果」と呼ばれる現象が米国政治にある。アフリカ系米国人が候補者となる選挙では世論調査の数字が実際の投票につながらないとの意味の政治用語である。これが起きているかどうかはわからないが、仮にそれがあるとすれば、オバマ氏との現在の差は、マケイン陣営にとっては逆転可能と映る。
副大統領候補に44歳の女性サラ・ペイリン・アラスカ州知事を指名したのも、逆境を打開するための一種の賭けだったとされる。外交・安全保障分野の経験不足を批判されるオバマ氏がジョー・バイデン上院外交委員長を選んだように、だれを副大統領候補に選ぶかは、大統領候補の足りない点を補える点が重要とされる。
ペイリン氏は少なくとも四つの点でマケイン氏を補完する。女性であり、28歳の年齢差があり、アリゾナ州とアラスカ州という地域の差があり、最も重要なのは妊娠中絶など社会的価値をめぐる問題で穏健派とされるマケイン氏に対し、ペイリン氏が保守派とされる点などだ。
共和党のレーガン政権が二期続いた後にブッシュ現大統領の父であるブッシュ氏が当選したのは、民主党マイケル・デュカキス候補がテレビ討論で失敗したためといわれる。グルジア情勢をきっかけとする米ロ関係など国際情勢の展開も選挙に影響する可能性もある。接戦から当分目が離せそうにない。



